25-10 水は方円の器に随う

1. 出典と意味
 「水は方円の器に随(したが)う」は、2200年ほど前、中国の春秋戦国時代の法家であるある韓非(かんぴ)の著書「韓非子(かんぴし)」にあるそうです。
 法家と云う学派は、法律による信賞必罰を行う思想で、秦の時代の政策に具現されましたが、その後の漢の時代以降は消滅しました。
 韓非子は、当時の思想・社会の状況を集大成と分析した書物と云われています。

 さて、この言葉の意味は、「水は、入れ物の形に従って、四角(方)にも丸(円に)にも、容器の形状に応じて収まる」というものです。

 これを、水は人、方円は人間関係や環境と置き換えてみます。次のような意味となります。
 人は人間関係や置かれている環境・状況によって、善くも悪くもなります。

2. 類似する言葉

① 人との交流
 「朱に交われば赤くなる」と云う言葉があります。ここでは、「朱」とは悪い意味に使われています。人は、交流している相手が悪ければ、自分も悪くなるということです。
 この言葉の起源は、中国に「墨に近づけば必ず(くろ)く、朱に近づけば必ず赤し」言葉によると思います。この意味は、「善人(墨)と交われば善人(緇)になり、悪人(朱)に交われば悪人(赤)になる」と云うことです。

② 環境の変化
 「孟母三遷の教え」と云う言葉が、2300年ほど前に中国で起きた出来事です。孟母とは孟子の母親であります。
 この言葉の意味は、「母子が墓地の近くに住むと、子供の孟子が葬式のまねをする。次に、市場の近くに住むと、孟子が商人の取引のまねをする。次に学校の近くに越すと、孟子が礼儀作法のまねをした」ということです。
 子供は周囲の環境を受けやすいので、子供が教育しやすい環境を選ぶことが大切であることを教えています。

 これは、大人でも云えます。会社に入り上司に恵まれますと、仕事を通じて自分の能力を引き上げていただけます。自分が水で、上司が器となります。

3. 「柔軟な水」になるにはどうすべきか
① 善悪について
 1.項で「水は方円の器に随う」の解釈は、「人は交友関係や環境によって、善くも悪くもなる」と書きました。

② 水と器の新たな見方
 「水は方円の器に随う」の新たな見方を考えました。それは、「水」は自分の「心の持ち方」で、「器」は「対人関係、環境、目標など」のことです。
 「水」である「心の持ち方」とは、善悪を判断する基準に基づいて判断し、行動するものです。この「善悪を判断する基準」は、法令、倫理、道徳、常識、習慣などを超越した基準のことです。時に応じて、この基準を日々積み重ねて行くことが自分の心の持ち方を向上させます。
 「心の持ち方」については、このホームページの「心の健康」と「心の栄養」を見て下さい。

 次の「器」である「対人関係の改善、置かれている環境の改善や脱出、何かをしようとする目標」のことです。
 「目標」とは、自分が何かを目指す対象のことです。その目標を実現する方法の一つとして、「やる気の5C」という考え方があります。
 この5Cは、チャンス(機会)→チェンジ(変更)→チャレンジ(挑戦)→チャージ(充電)→チャーム(満足)
 チャンス(機会)は、何かやりたいことを発見したり、欲求を見つけます。
 チェンジ(変更)は、チャンスと思ったことをやろうと決意します。
 チャレンジ(挑戦)は、やりたいことを実現に向けた挑戦をします。
 チャージ(充電)は、自分の能力が足りないところを補う学習や他の人の協力などを得ることです。
 チャーム(満足)は、思ったことが実現したときの喜びを味わう意味となります。

 この5Cは、善悪にかかわらず、やろうと思った事柄の全てに適応できると思います。悪に走らないために、善き「心の持ち方が」重要となります。