1. 不易流行の創案者
不易流行(ふえきりゅうこう)とは、江戸時代の松尾芭蕉が俳諧(現在の俳句)を作るときの根本的な考え方です。
2. 不易流行の出典
不易流行という言葉が明示されているのは、江戸時代の去来抄(きょらいしょう)にあります。
「去来抄」は、芭蕉の門人である関西の向井去来(むかいきょらい)が、芭蕉とその門人の句や俳論を集めた内容で、蕉風俳諧の根本的な考え方を伝える貴重な文献の一つとされています。
去来抄は、1702年(元禄15年)ごろから1704年(宝永元年・去来が病没した年)の短期間に書いたものです。去来の死後70年が経って、去来の実弟の魯町(ろちょう)が1775年(安永4年)に「去来抄」を刊行しました。
3. 去来抄の「修行教」編の記事
① 不易流行の記事
【原文】
魯町曰、不易流行の事は古説にや、先師の發明にや。
去來曰、不易流行は萬事にわたる也。しかれども俳諧の先達是をいふ人なし。
【解説】
魯町が言う。不易流行の事は古い説か、芭蕉先生の発明ですか。
去来が言う。不易流行は俳諧のすべての事に言える。しかし、芭蕉先生以前の人は不易流行ことを言わなかった。
② 不易流行の意味
【原文】
去來曰、蕉門に千歳不易の句、一時流行の句と云有。是を二 ツに分つて教へ給へども。
其基は一ツ也、不易を知らざれば基立がたく、流行を辨へざれば風あらたならず。
不易は古(いにしえ)によろしく、後に叶ふ句なれば、千歳不易といふ。
流行は一時一時の變にして、昨日の風今日よろしからず、今日の風明日に用ひがたきゆへ、一時流行とは云はやる事をいふなり。
【解説】
去来が言う。芭蕉の門人は、千年変わらない句と一時流行する句がある。これを二つに分けて教えていただいた。その一つです。
不易は普遍的に変わらない本質ことで、これを知らなければ、俳諧の普遍的な基礎は確立しない。
流行は時代に応じて変わるもので、これを知らなければ、新しい風(進歩)が生まれない。
よって不易と流行の根本は一つであると言える。
不易の句は昔から伝わり、後の世にも残るので、千年も親しまれる句と言う。
流行の句はその時代その時代に応じて変わるので、昨日の風は今日よくない、今日の風は明日用いることは難しい。これを一時の流行という。
4. 不易流行は現代に適用できるのか
不易流行は、不易と流行の合体用語です。
不易は、時代が変わっても変わらない根本的なものです。何らかの原理原則であり、基軸となるものと言えます。
流行は、不易に基づいて現在の状況に応じて対処することです。
この考え方は、俳句だけでなく、個人の生き方、日常生活、事業、学業、研究、役所、公共サービスなどすべてものに適用できると思います。