今回は趣を変えて、江戸の文化という粋(いき)という美意識を取り上げてみます。
取り上げた理由は、その時代に応じて豊かに暮らすための秘訣が潜んでいるからです。今でも通じる美意識だと思います。
1. 江戸の粋とは何か
江戸時代の後期になりますと、世の中が泰平となり、江戸の商人が独自の美意識を創りあげました。これが、江戸の粋と呼ばれるものです。
江戸の粋とは、一言でいえば「洗練された美意識」です。
洗練という言葉をいくつかの辞書で調べてみますと次のような意味があります。
洗練とは、物を洗ったり練ったりして、結果として
① 垢抜けている。
② しゃれている。
③ 謙虚である。
④ 世の中の事情をわきまえている。
⑤ ゆとりのある生活をしている。
2. 江戸の粋の具体例
2.1. 好感を持たれる身だしなみ
身だしなみとは、服装を清潔にして、TPO(時間、場所、場面)にふさわしく、他人から見て不快な感じを与えない身なりです。それだけでは、粋になりません。それには、他人から見て好感の持てる美意識が必要です。
当時の服装は、和服です。和服の種類として、着物、甚兵衛、作務衣、浴衣、羽織、半纏などがあります。
仕事、祭などの行事、くつろぎなどに着る和服の様式が異なります。
目に見えないところに気を配ることもあります。例えば、着物の裏、下着など。
2.2. 格好良い振る舞い
振る舞いとは、人との対応や物事を行うときの、姿勢、態度、動作、行動などです。
格好よくするには、行儀作法がきちんと出来ていて、言葉づかいや伝統文化の素養などが身に付いているということになります。伝統文化は、茶道、華道、日本舞踊、音曲などがあります。
2.3. 思いやりのある人情味
人情味とは、人間として持っている心の温かみです。思いやりは、相手の気持ちになって損得勘定をもたず、見返りを求めないことです。
特に、もめ事はいつどこで起きるか分かりませんが、双方の言い分を聞いて、調停を行うこともあります。
2.4. 美意識の感性を磨く
見たり、触ったりなどして五感で感じる、眼力という美意識を磨きます。
更に、対象とする美術工芸品を集めることもあるでしょう。それらを見たり、触ったり、使ったりして楽しむことも出来ます。
2.5. 特定な人への支援
美術工芸品を創る特定な人の将来性を考えて、他の人には分からないように支援することもあります。
3. 今の時代にもつながる「江戸の粋」
「江戸の粋」の美意識を、趣味、自分の好きなこと、自分がやりたいことに置き換えれば、今の時代にもつながります。
現代は情報が氾濫し、その上、偽情報も増えています。更に、多種多様な人がいるなかでコミュニケーションを円滑に取ることが難くなってきています。
物事をきちんと見極めて、どのように対処するかを判断し、行動するすることが大事です。