1. 「足るを知る」
1.1. 「足るを知る」意味
この言葉は、自分自身が今置かれている状況や今ある状況に満足していることです。
現状をあるがまま受け入れ、その状況の中から「心の豊かさ」、「楽しみ」、「幸福」、「感謝」、「穏やかさ」、「自分の価値観」、「新たなこと」を見出す要素があると思います。
1.2. 「足るを知る」という充足感
・ 物的な豊かさに執着しないことです。
・ 季節の移ろい、散歩する、友人と交流するなど、自分なりの小さな楽しみや幸せに気付くことです。
・ 心身の健康など感謝の状況を見出すことです。
・ 気持ちがいらつかず、穏やかにいられることです。
・ 他人と比較せず、自分の価値観を見出すことです。
2. 「足るを知る」の出典
2.1. 出典の言葉は「知足」
出典に述べられているのは「足るを知る」ではなく、「知足」の二文字で表現されています。
2.2. 仏教の経典「仏遺教経」
この経典は、2500年ほど前、インドの仏教の開祖・釈迦の最後の教えをまとめられたものと言われています。
この「仏遺教経」に、「足るを知る」について、心を富ませ、心を楽しませ、心が安穏である状態であることを述べています。
2.3. 「老子」
2400年ほど前の中国の思想家・老子が表わした『老子』に、「足るを知る」という言葉を残しています。
「足るを知る」意味は、自分の置かれている状況に満足しているということです。
この言葉が含まれる文を幾つか紹介します。
「足るを知る者は富めり」
「足るを知れば辱(はずか)しめられず」
「禍(わざわい)は足るを知らざるより大なるは莫(な)し」
① 原語「知足者富」の書き下し文「足るを知る者は富む」の意味
現状を満足することを知っている者は、心が豊かです。
逆に、どんなに財産があっても、もっと欲しいと望めば、常に心が貧乏人となります。
② 原語「知足者不辱」の書き下し文「足るを知れば辱しめられず」の意味
満足することを知っている者は、過ちを犯さないから、世間から辱められることがありません。
③ 原語「禍莫大於不知足」の書き下し文「禍は足るを知らざるより大なるはなし」の意味
世の中にいろいろと禍があるが、「足るを知らない」禍ほど大きなものはないのです。
3. 京都の龍安寺のつくばい(手水鉢)
龍安寺は禅宗の曹洞宗というお寺です。
この龍安寺に、方丈という建物の脇に手を清める「つくばい」があります。
このつくばいの上面に次のような文字が刻まれています。
真ん中の「口」のところに、手を洗う水が上から落ちて溜まるようになっています。
中心の口の字と周りの字を組み合わせて、五から右回りに回りますと、「吾唯足知」となります。これは、「吾(われ)唯(ただ)足るを知る」と読みます。
龍安寺のつくばいの文字は、「知足」でなく「足知」と文字が逆になっています。
日本人にとって、わかりやすいように表現したのでしょう。
このつくばいは、徳川光圀が寄進したものだそうです。