25-29 一木一草と食の関係

1. 一木一草の言葉を知ったいきさつ
 以前、宮崎市のホテルに宿泊したとき、レストランの入り口に「一木一草」の暖簾が掲げてありました。
 この食堂は、ビュッフェレストランです。自分の食べたいものを食器に取り、自分の席に持ってきて食べます。
 食材は宮崎県内のものを使い、季節の料理や郷土料理を提供しています。
 自分は、ゆったりして、美味しく食べさせていただきました。

2. 一木一草の意味
 辞書で調べたら、一木一草は、「いちぼくいっそう」と読み、一本の木、一本の草のことです。その意味は、極めてわずかなものの例えとあります。
 このホテルでは、一木一草を「いちもくいっそう」と呼んでいます。何故なのだろうか?

3. 一木一草と自然の恵みとしての食
 「一本の木や一本の草」に、別な言い方をしますと「すべての木や草」にも「神が宿る」という日本古来の自然観があるようです。
 この日本古来の自然観とは、日本は島国で、四季折々の自然の恵みの恩恵を受け、文化や美意識に独特の感覚を持っております。
 「医食同源」や「まごわやさしいね」(25-23きのこは体にいい)のように自然界に存在するすべての食べ物が、我々の食生活に深く関わっているのです。

 現実には、「木や草」ごとに食べられるもの(体にとっていい物)、食べられないもの(毒きのこ、トリカブトなど)、漢方薬のように薬剤に分けられます。

4. 食に関する一木一草の心
 我が家では、食事をする前に「いただきます」、食事が終わったら「ごちそうさま」といいます。自然の恵みとそれを育て提供してくれる人々に感謝をすることだと教わっています。

① 神へのお供え
 農家では、新米を初穂(はつほ)として、神様に捧げ、神に感謝する考え方があります。

 以前、台東区上野桜木に住んでいた友人が、毎年、近所の子供達を埼玉県の田圃に連れて行きました。その田圃で、田植えをさせ、草取りに行き、実った稲を刈り取り、取った稲を精米してもらい、持ち帰っていました。
 谷中の五重塔が焼けて、その跡地があいています。この場所は下谷警察署天王寺駐在所の脇にあります。この空き地で、地元のお母さんたちが新米を炊き、料理を作り、おじさんと子供が一緒に餅をつき、子供達に食べさせていました。
 主催者の代表(町内会長)が、子供達の労をねぎらい、自然の恵みに感謝して、食事の始めに「いただきます」、終わりに「ごちそうさま」というよう話したことを覚えています。
 自分にできることは、バス代や食材などに寄付したことがあります。

② 一汁一菜の考え方
 日本の基本的な食事として、一汁一菜があります。これは、ご飯、具たくさんの味噌汁などの汁物、おかず一品のことです。

③ ホテルがレストラン・一木一草に取り組む心とは
 食べることは生命の維持の基本で、楽しく、おいしく食べたいものです。

 このレストラン「一木一草」では、料理した食材を大きな容器に盛って並べています。お客は、その場所に行き、食材を取り皿に移して自分の席に持ってきます。
 食卓の間隔が広く、ゆったりと食事がとれます。

 このレストランでは、食材の特徴を活かした料理を作り、顧客が楽しくくつろいで食事ができ、よい思い出になるように配慮しているものと思います。